データで振り返るJ1前半戦 今季のJリーグの特徴は?

Jリーグは7月4日、「J STATS REPORT 2025 Q2」を発行した。

これはJ1の2025シーズン前半戦をデータで振り返るもので、その狙いは「データがより身近に、親しみやすいものになるように。またデータによる新しいサッカーの楽しみ方の提供や、日本サッカーの強化・育成・普及への貢献を目指して」とされている。

今回は「データで選ぶベストイレブン」やアクチュアルプレーイングタイム、アプトオブプレータイム、ゴールについてまとめられており、興味深い内容が掲載されている。

データで選ぶベストイレブン

まずは、算出データを元に、評価テーマごとの重要度をかけ合わせ、そのスコアの高い順に選出された「データベストイレブン」から。

今回は第19節までに10試合以上出場した選手を対象に、以下の選手が選出された。

GK:早川友基(鹿島アントラーズ)
CB:荒木隼人(サンフレッチェ広島)、古賀太陽(柏レイソル)
SB:久保藤次郎(柏レイソル)、半田陸(ガンバ大阪)
MF:ルーカス・フェルナンデス(セレッソ大阪)、稲垣祥(名古屋グランパス)、 マテウス・サヴィオ(浦和レッズ)、北野颯太(セレッソ大阪→ザルツブルク)
FW:レオ・セアラ(鹿島アントラーズ)、鈴木優磨(鹿島アントラーズ)

データだけで客観的に選ばれた面々は、非常に納得のいくものになっている。

どの選手も今季のリーグで印象に残るパフォーマンスを見せているメンバーで、データでもそれが裏付けされている形となっている。日本人8人のうち5人が東アジアE-1選手権を戦う日本代表に選出されており、入らなかった3人も、北野は海外移籍、半田と鈴木はJでは圧倒的とも言えるプレーを継続しており、文句の付けようのないメンバーだと言えるだろう。

個々で見ると、早川は失点期待値の合計が21.6に対し、実際には15失点に抑えており、その差の大きさはリーグ1位。荒木は自陣での空中戦勝利数がリーグトップの66回、古賀はペナルティーエリア内でのクリア数67回とシュートブロック16回がリーグ3位で、危ない場面を救ってランクイン。久保は「ゴール+アシスト数」で対象選手で最多タイの5を記録。走行距離やスプリント数でも上位に食い込み、半田はシュートブロック数でトップに立ち、デュエル数勝利では対象選手平均44回に対し、105回を記録する驚異的な数字を残した。

ルーカス・フェルナンデスは第19節までに11アシストを記録。稲垣は基準とされた数値全てで高い数字を残す万能ぶり、サヴィオはラストパスとスルーパスの成功数がいずれもリーグ2位と光った。北野は対象でトップとなる45本のシュート数と4得点4アシスト、運動量の多さでも貢献したことが証明された。

前半戦で11ゴールを決めたレオ・セアラは、ゴール期待値合計5.7に対して、+5.3とほぼ倍の得点をゲット。群を抜く決定力の高さが数字でも示された。鈴木は被ファウル数44回がリーグ2位で、バイパス受け数でも6位。FWながらヘディングクリア数21回でトップにもなっており、攻守両面での貢献をして、首位に立つチームをけん引した。

スタイルが如実に反映されるアクチュアルプレーイングタイム

実際にボールがプレーされている時間を示す「アクチュアルプレーイングタイム」は、53分33秒という数字が示され、前年同期比で1分9秒プラスとなっているとされた。

チーム別ではアルビレックス新潟の58分59秒がトップで、2位には58分00秒の柏レイソルが入った。柏は昨季から6分12秒増えており、この伸びはJ1で最長となっている。リカルド・ロドリゲス監督が就任して、ボールをつなぐようにスタイル一新したことが、数字でも証明された形となっている。

逆に短いチームが、48分12秒のヴィッセル神戸、48分13秒の京都サンガF.C.、49分15秒のファジアーノ岡山だ。いずれも強度の高いサッカーを志向し、相手に自由を与えない戦いをすることがこの数字にわかりやすく反映されている。

Jリーグではアクチュアルプレーイングタイムを伸ばすことを目指して判定基準を変更したりしているが、必ずしも長ければいいというものでもない。それぞれのチームスタイルも反映される数字として、今後も注目していきたい。

アウトオブプレータイムでも目立つ柏の変化

アクチュアルプレーイングタイムが伸びていることもあり、アウトオブプレータイム(止まっている時間)は46.4分と昨季から1.5分減少していることが明らかになった。

セットプレーでは、スローインを除く全て(FK、ゴールキック、CK、得点→キックオフ、PK)でマイナスとなっており、FKに関しては1.2分減となっている。これは、接触プレーでのファウルを取ることが減っていることで、FKの数自体が減っていることも大きな要因となっているようだ。

一方で、スローインに関しては時間をかけるようになっており、ロングスロー以外でも、各チームさまざまな戦略を練って活用するようになっていることがうかがえる。

チームで目立つ数字を残しているのは、ここでも柏。アクチュアルプレーイングタイムが増えている柏は、セットプレー時のリスタート時間が昨季から一際減っており、1回当たりの平均時間で、FKで6.9秒、CKで9.2秒、ゴールキックで7.4秒短くなっている。

ゴール数は昨季より減少 その理由は?

1試合平均得点は、昨季の2.67点を下回る2.28点という結果となった。

その原因として、データ面から挙げられているのは3つ。シュート数の減少、ゴール期待値の減少、セットプレーからの得点減少とされた。

シュート数は1試合平均で昨季の24.9本から22.2本に減っており、シュート成功率も9.3%から9.1%に。1試合平均ゴール期待値も2.31点から2.02点となっており、各チーム前進の苦労と、苦労しても得点が奪えていない現状が露呈された。

得点数は欧州5大リーグと比較しても少ない。よりゴールを増やすことがファン増加につながると考えられるため、ここからの増加に期待して、後半戦を見ていきたい。