J1は5月31日と6月1日にJ1第19節が行われ、シーズンを折り返した。2026年から秋春制に切り替わるJリーグにとって、今季が現状フォーマットでは最後のシーズンとなる。
そんな今季のJ1全クラブとの対戦を終えて、見事首位ターンを果たしたのは、鹿島アントラーズだ。
湘南ベルマーレとの開幕戦にこそ敗れたものの、その後4連勝して第5節に首位浮上。3連敗もあったが、第11節からの7連勝で首位を盤石なものにした。
今季から鬼木達監督が就任したばかりながら、鹿島らしさを取り戻し、より攻撃的な意識を強めた戦いがフィット。新加入のFWレオ・セアラがリーグ単独トップの11得点を決める活躍をしていることも、結果につながっている。
直近のガンバ大阪戦では、シュート数で3対16と上回られながらも、結果は1-0勝利。G大阪の攻撃を受け続ける時間が長くなったことを指摘されても、鬼木監督は「勝つことだけを求めていたので、内容が悪いとは思っていない。これが鹿島の戦い方」とコメント。鹿島に鹿島らしさが戻っていることをうかがわせる、力強い言葉だった。
鹿島で気になるのは、主力で続出しているけが人の多さ。昨季ベストイレブンのDF濃野公人、FW師岡柊生、DF関川郁万らが負傷離脱。直近のガンバ大阪戦で途中交代したDF安西幸輝も左膝前十字靭帯損傷で離脱を余儀なくされ、代わりに出場機会を得る選手たちがいかにその穴を埋められるかがV奪還へのキーポイントになりそうだ。
2位で折り返したのは、曺貴裁監督体制5シーズン目にして花開こうとしている京都サンガF.C.だ。
昨季はJ2降格の危機にもあった京都だったが、FWラファエル・エリアスが加入した後半戦だけで見れば3位の成績を残した勢いそのままに、快走している。
開幕から3戦は2分け1敗となったが、第4節川崎フロンターレ戦で初白星をつかむと、第6節からの5試合で4勝1分けとして2位浮上。特に第9節のアウェイ鹿島戦では、3-2とリードした終了間際に追い付かれながらも、90+5分にエリアスがハットトリックとなる決勝点で劇的勝利。今季の力が本物であることを証明してみせた。
どのチームよりも強度高く、走り続ける京都は後半に圧倒的の強さを誇るのが強み。リーグ最多の総得点30点のうち、前半に記録したのが9点に対し、後半は21点を決めており、それを証明する。DF福田心之介やDF須貝英大を筆頭に、終盤にわき出るような攻撃参加ができることは相手の脅威となっている。
エリアスやFW原太智、FWマルコ・トゥーリオという3トップが負傷離脱する期間がありながらもこの順位をキープしている今季は、本格的に優勝争いを続けていくことになりそうだ。
3位の浦和レッズはすでに21試合を消化しており、気になるのは浦和より2試合消化が少ないながらも勝ち点34で並ぶ4位の柏レイソルだ。
リカルド・ロドリゲス監督が新たに就任。昨季までの軸だったMFマテウス・サヴィオが浦和に移籍するなど選手も大幅に入れ替わったことで、当初はチームづくりに時間を要すとみられていた。しかし蓋を開けてみれば、短期間で完成度の高いサッカーを展開して上位に定着。丁寧にボールをつなぎながら、2〜3列目の選手が飛び出していく攻撃で相手を翻弄し、対戦相手に合わせて布陣を変更しながら戦う柔軟さも持ち合わせて勝ち点を積み上げた。
すでにチームはできあがっているようにも見えるが、時間が経過すればするほど、より熟成度が増すと期待され、後半戦を楽しみにさせるチームとなっている。
昨季のFC町田ゼルビアに続き、今季も昇格組が奮闘している。
初めてJ1を戦うファジアーノ岡山は、降格候補の筆頭に挙げられた予想を大きく覆す戦いぶり。J2で積み上げてきた攻守にアグレッシブな戦いをJ1の舞台でも堂々と披露し、堂々の11位ターン。リーグ3位の17失点という堅守が光り、クリーンシートの数も7試合とリーグ4位の数字を残している。新加入MF江坂任がチームをけん引し、日本代表にも初選出されたMF佐藤龍之介も躍動。バランスの良い戦いは今後も安定して推移していきそうだ。
同じく昇格組の清水エスパルスは、岡山の上を行く9位で折り返した。MF乾貴士が輝きを放つプレーを続け、FW北川航也は得点ランキング2位の8得点と好調をキープ。攻撃のクオリティはJ1復帰組とは思えぬものとなっている。
逆に、当初予想よりも苦しむ前半戦となったのが、ヴィッセル神戸と横浜F・マリノスだ。
J1連覇中の神戸は、富士フイルムスーパー杯やAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)も含め、初戦から8連戦といきなりハードスケジュールを強いられた。負傷者も続出し、なかなかベストメンバーが揃わない試合が続き、MF山口蛍やDF初瀬亮が抜けた影響も否定できない状況に。開幕から4戦未勝利と苦しみ、ACLEで敗戦したショックも抱え、なかなか本来の戦いを示せなかった。
それでも徐々にメンバーが揃ったことで上向きとなり、第10節からは4連勝。折り返しまでに6位まで浮上したチームが、右肩上がりで結果を出し続けられるのか。3連覇を成し遂げるには、これ以上の取りこぼしは許されない。
今季最大の驚きは、最下位に沈む横浜F・マリノスだろう。
消化した18試合で3勝5分け10敗。勝ち点はわずかに14にとどまり、第10節からは7連敗。第11節で敗れてからは順位表の一番下から抜けられずにいる。
4月18日にはスティーブ・ホーランド監督と契約を解除。パトリック・キスノーボヘッドコーチが監督に昇格し、巻き返しを図ることになった。
その影響はすぐには出なかったが、前半戦の最後2試合となる鹿島戦、町田戦で今季初の連勝を飾った。2試合連続3ゴールでの勝利が自信となり、鹿島と並んでJ2降格経験がないオリジナル10の名門が意地を見せるのか。これが優勝争いと同等、もしくはそれ以上に注目を集めることになりそうだ。